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読書人と黒猫

読書人にとって有意義な一日とはなんだろうか、という事をたまに考えます。
彼らは喫茶店の奥のほうで、妙に高い珈琲を飲みながら寺山修司を読んじゃうのでしょうか。
それとも日曜の午後、ソファの上でトルストイ?(BGMはクロイツェル・ソナタとか)
放課後の図書室でシェイクスピアなんていうのも絵になる気がします。

恐らく、これは人によって意見が分かれるところでしょう。
各人の持つイメージというものもありますし。
でも残念なことに、自分は「これぞ読書人!」という一日を過ごした事がなかったりします。
なので、昨日はそんな気分を味わうために大学生協主催のイベント「『読書のいずみ』公開 座・対談」に行ってきました。
対談するのは『鴨川ホルモー』『鹿男あをによし』でお馴染みの万城目学さん。
作家と会うだなんて、読書人らしいと思いませんか。


ところで自分は出かけるとき、鞄に本が二冊以上ないと落ち着きません。
結局は読まずに帰宅しちゃったりするんですが、それでも気がつくと本を鞄に突っ込んでいます。
今日持っていったのは『AURA』『外科室・海城発電』、それとサイン用の『ザ・万歩計』。
(ちなみに『AURA』は候補作の一つになった『人類は衰退しました』の著者・田中ロミオさんの新刊です)

行きは電車の中で『外科室・海城発電』を少しだけ読みました。
でも開催地である東高円寺まで、乗換えが多いせいでなかなか進みません。
仕方ないので初の副都心線を楽しむ事にしました。
さすがに綺麗ですね。あと、なぜか外国の方が多い。
そんな事を思いながら新宿三丁目で乗り換え。東高円寺はすぐでした。

そして、とうとう対談がはじまります。
質問と回答の鋭い応酬が繰り広げられるかと思いきや、対談は終始和やかでした。
実を言うと、自分は万城目学さんにゴツい感じのイメージを持っていたのですが、ぜんぜん違っていました。
質問の意図を汲み取り、先回りして思うところを伝えたり、なにかとメタルギアソリッドの話をしたり。
非常にユーモアのある人でした。
ウィットに富んだ受け答えが心地よかったです。

ちょっと驚いたのは知り合いの多さ。
なんと合計して三人もいました。
やはり大学生、参加するイベントが被ります。
なぜか法政の学生が多く、万城目学さんに「法政ばっかりだね」と言われちゃいました。

サイン会も恙無く終わり、帰りの電車の中。
自分は対談の余韻を噛み締めながら『ホルモー六景』を読みます。
未読にもかかわらず対談に参加したせいで、ネタバレされてしまいました。自業自得ですね。
ここで今日を振り返り、「これぞ読書人!」と言える一日だったかを確認しました、が。
......何か違う。
こんな時、真の読書人は対談だけで良しとせず、神保町でごっそり本を買っていそうです。
日記のネタにするため行こうとも思ったのですが、その時点で、自分がいるのは多摩川。
冴えない読書人たる自分を恥じながら、地元駅で降りました。

結局、「これぞ読書人!」な時は過ごせませんでした。
家に帰っても本ではなく漫画を読んでしまい、だらだらしているうちに一日が終わってしまいました。
どうして自分はこう、何をやってもサマにならないのでしょうか。
夜、散歩に出たら全力で黒猫が逃げていきました。
少し遠出してみたら、自転車のタイヤがパンクしました。
途方に暮れたその時、ふと、対談で聞いた言葉を思い出しました。

万城目学さんは言いました。
「学生は無駄をしている姿が美しい」と。
読書人らしくない、ぼんやりとした一日だったけど、自分にはこの位がちょうどいい。
不思議とそんな気持ちになりました。

帰り道、パンクした自転車を押していたら、黒猫が前を横切っていきました。
エドガー・アラン・ポーを連想し、明日こそ本を読もう、そう思いました。

(矢作)