人類は衰退しました

  • 『人類は衰退しました』

  • 田中ロミオ
  • 小学館ガガガ文庫
  • 600円(税込)
  • 2007年5月
  • 人類は衰退して、地球は妖精さんのものとなりました。身長10センチで3頭身、お菓子が大好きな妖精さん。主人公はその妖精さんと人との間を取り持つ調停官になり、小さくて愛くるしい彼らと接触を試みます。

『人類は衰退しました』推薦文

推薦文No.2-1
九州工業大学文芸部

 田中ロミオさん著の「人類は衰退しました」を推薦します。
 理由としてまず、第一に作中の活き活きとしたキャラクターたちを挙げたいと思います。

 人類が既に衰退し「旧人類」と呼ばれるようになり、新しい人類である通称妖精さんとの仲立ちのような役割を負っている調停官になった主人公。彼女(主人公は女の子です)が、その職業を全うするために妖精さんに近づこうと頑張る姿、妖精さんのために一人ひとりに名前を考えようと頭を悩ませる姿や妖精さんのためにお菓子を尽くす姿。
 また、主人公の祖父が、主人公の前の調停人で孫の主人公に謎掛けのような言葉を残したり、妖精さんについて説明し、頭のよい一面を見せる姿、年寄りなのに狩猟と銃が好きというアンバランスな姿。
 そして、何よりこの話の裏の主人公と言っても過言ではない新人類である妖精さんの突拍子もない行動。例えば、主人公の一言で一夜にして近未来都市を作ってしまったり、大声で団子虫のように丸まってしまったり、楽しいことがあれば、その分だけ人数が増えて、次々と不可思議な行動を取ったり、色々な行動が見られます。そんな行動に驚いたり、にんまり笑えたりしてしまいます。
 キャラクターたちの行動がどれもこれも活き活きとしていて、読んでいると思わず笑ってしまうこともしばしばだったり。そんな彼らの姿が好ましいと思います。
 第二に、そのほのぼのとしたストーリーです。
 確かに、この作品はミステリーのように謎解きもなければ、恋愛小説のようにドキドキしたりするような展開もなければ、文学小説のように考えるような場面もありません。
 ただ、主人公と妖精さんのどたばた騒ぎを面白おかしく書いた作品です。
 一般的に言うところのライトノベルに分類される著書だから仕方ないのかもしれませんが、この作品はこれでいいのだと思います。むしろ、そこが良いのかと思います。
 何も考えず、この本を読んで、笑って、面白かったと思えればそれでいいのだと思います。このほのぼのとした空気に当てられてのんびりした気分になれば、それだけでいいのだと思います。
 現代の日本人は忙しいとされている中で、読むだけでゆったりとした気分になれ、殺伐とした心を忘れられる本というのはとても貴重だと思います。
 そんな気分にしてくれるこのほのぼのとしたストーリーが第二の理由です。
 第三に文章力の高さも挙げたいと思います。
 この作品は主人公の一人称で書かれているのですが、それがびっくりするぐらい上手いと思います。
 多彩な表現を使い主人公の心情を上手く描写されているように思えますし、情景描写も十分すぎるほどに表現されています。他の作品も読みましたが、遜色のないレベルだと私は思いました。
 また、ところどころに撒き散らしてあるネタがちょうどいいスパイスになっているように思えます。そのネタが思い当たったときは思わず笑ってしまうほどに。
 以上、三つの観点から、田中ロミオ著である「人類は衰退しました」を推薦したいと思います。

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