幼年期の終わり

  • 2008大学読書人大賞 受賞作品

    『幼年期の終わり』

  • A.C.クラーク
  • 光文社古典新訳文庫
  • 780円(税込)
  • 2007年11月
  • 地球に突如現れた大宇宙船団。オーヴァーロード(最高君主)と呼ばれる彼らは、人類を理想社会へと導いていく。彼らの真意は? 人類はどこへ向かうのか? なお、新しい第一部の訳が読めるのは、この光文社版だけ。

真に大学生のための。

推薦文No.5-3
いわき明星大学文芸愛好会

 我がサークル内で最初に論議になったのは、本を読まない大学生のために本を選出すべきだということだ。
 その論議を踏まえて、五冊選出した。

 この結果どう思うだろうか。確かに読んでみれば、読みやすいものも多く、それなりのものが揃ったように思う。
 「しかし、それは文芸サークルの独りよがりではないのだろうか?」
 我がサークルの中でこの推薦作品を見た感想がこれである。
 我々が考えたのは、さまざまなメディアで露出度の高いものを選んだ。ところが、今回選んだものは果たしてそうだといえるだろうか?
 もちろん我々本を嗜んでいる者にとっては、どれも有名な本である。しかし、ほかの大学生は? 桜庭一樹の名前を知っているのがせいぜいなものではないか。
 この選出。何を考えているのか、ほかの大学のサークルに問いただしたい気持ちであった。
 だが、この五作品はまぎれもなく、大学読書人大賞にノミネートされた。
 だいぶ前置きが長くなった。それでなぜ、この作品を推薦したのかということにうつろう。
 この五作品を見て、我がサークル内の議論で次のような結論を出した。「本好きが選ぶ、最も良書であり、かつ、大学生にふさわしいもの」
 それがこの五作品にこめられている含意。そうなのであれば、すぐに、この五作品の中でその役目を果たせるのはもうひとつしかないと感じた。
 それが「幼年期の終わり」である。
 この作品を押した理由はさまざまあれど、ひとつ声を大にして言いたいのは、そのあまりに大きい題材についてだ。
 地球規模の話ではない。宇宙の未来にすら関わってくるテーマ。そして、その過程にある地球の運命。さりげなく、ユートピアについて語られているところも、忘れてはならない。
 今現在の地球の未来を考える。このようなことを考えるとき、SFというのものは遺憾なくその力を発揮する。たしかに、SFというジャンルが蔑まれてきた時代もあった。実際、荒唐無稽なことをきちんと筋道を通してリアルに描ききるといったものが本物のSFだと、おっしゃる作家の方もいらっしゃいます。
 ただ、それでもこの「幼年期の終わり」には地球の未来を重ねてしまう。それは宇宙人が来襲するなどということを指すのではなく、地球が黄金期を迎えた後待っているものは何なのだろうか。という、壮大な未来が語られているように思えてなりません。
 我々が住む地球は果たしてどのように終えるのか。果たして、地球という惑星の寿命を全うするまで人間はその地に住んでいるのか? このような疑問が荒唐無稽であり、今後の未来を考える妨げになるとは思えない。むしろ、これからの未来を背負う我々こそが心のうちに秘め、常に考えていかなければならないことだと思うのである。
 はじめにかいた「大学生にふさわしいもの」それはこのようなものを指すのではないか。そして、強く多くの大学生にこれを読んでいただき、大いに議論していただきたい。真に地球の未来とはいかなるものかを。

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