ゼロ年代の想像力

  • 『ゼロ年代の想像力』

  • 宇野常寛
  • 早川書房
  • 1,890円(税込)
  • 2008年7月
  • ゼロ年代に入ってから大きく変化していく時代と文化状況。この10年で生まれたサブカルチャーの想像力の変遷から、現代を語る。SFマガジンに連載中から話題になっていた批評に、さらに加筆修正した一冊。

『ゼロ想』における二つの効能

推薦文No.4-3
早稲田大学現代文学会

 私が本書を大学生に薦める理由は以下の2点である。

 ①現代文化の幅広い範囲を網羅したガイドブックであること。
 ②コミュニケーション・ツールとして使えること。

 まず①について。
 自分の専攻する分野の勉強に追われ、他の分野に関心は持っていても、なかなか手を伸ばすことの出来ない大学生は数多いだろう。例えば文学部の学生なら、幅広い人文科学の世界の全体を見渡したいという欲望を一度は持ちながら、文学や哲学などの一分野にとどまっている。「全体の見通し方が知りたい」。そう思っている学生は少なくないはずだ。本書は、全体を展望する方法を教えてくれる手引きである。
 『ゼロ年代の想像力』は、普通の評論書ではない。一般に評論書といえば、文芸評論や漫画評論のように対象を一つに絞って論じている。しかし、『ゼロ想』は、漫画・アニメ・小説・テレビドラマ・映画など異なる多様な表現手段について論じている。これなら、小説をずっと読んできたが漫画・アニメも気になりだした人や、反対に今まで漫画・アニメに関心が限定されていたが小説にも興味が出てきた人などには格好の入門書になるはずだ。そういった人たちには、上に挙げたような悩みを持つ大学生と共通する部分があるだろう。学問や芸術の全体を見渡したいと思いつつもできないでいる大学生は、現代文化の全体を論じようとしている本書の姿勢を学び、自分の興味・関心に応用するべきだ。

 ②について。
 大学生ならば、いろいろな興味・関心を持った人々と交流する機会があるだろう。趣味がまったく違う相手と、分かり合うためには? たとえば、自分は小説が好きで、相手が大の映画好きであった場合。
 ここでは、二人の間に「物語」という共通項が存在する。小説も映画も物語である。物語が好きなら、二人はコミュニケーションできるはずだ。
 『ゼロ想』において、宇野が幅広い分野を論じるうえでもっとも着目した点は「物語構造」である。本書を読んで、自分の専門とは違う表現手段の「物語」について知っておけば、異なる趣味の人と交流するときに話のタネにできる。文学青年が『仮面ライダー電王』の物語について語れるのだ。このように、本書はコミュニケーションツールになりうる。

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