容疑者Xの献身

  • 『容疑者Xの献身』

  • 東野圭吾
  • 文藝春秋
  • 660 円(税込)
  • 2008年8月
  • 不遇の天才数学者、石神は、自らが密かに思いを寄せる隣人の殺人を知り、彼女のために完全犯罪を仕組む。これに挑むのは、石神の旧友であり、物理学者の湯川。天才同士の攻防から意外な結末まで、見所多し。

容疑者Xの献身を読んで

推薦文No.6-3
田園調布学園大学文芸部

 容疑者Xの献身を読み続けて行くうちに、悲しさとせつなさが残りました。読み終わってから時間がたつにつれて、私はこれが東野さんらしい展開のお話なんだというおさまり感が感じられました。
 あらすじとしては、花岡靖子は娘・美里とアパートの二人暮らし。物語は靖子の元夫、富樫慎二が彼女の居場所を突き止め、訪ねてくるとこから始まる。暴力を振るう夫を靖子と美里は大喧嘩の末に殺してしまう。今後の成り行きを想像し、あ然としている親子に救いの手を差し伸べたのは、隣に住んでいる天才数学者である石神だった。彼は自らの論理的思考によって二人に指示を出す。そして、旧江戸川で夫の死体が見つかる。警察は母親のアリバイを聞いて目をつけるが、捜査が進むに連れて真相に近づくがことごとくズレが生ずることに気づく。困り果てた草薙刑事は、友人の天才物理学者、湯川に相談を持ちかける。すると、驚いたことに石神と湯川は大学時代の友人だった。彼は当初この事件を傍観していたが、やがて石神が犯行に絡んでいる事を知り、独自に解明に乗り込んでくる。天才数学者と天才物理学者の二人による、殺人事件をめぐる激しい攻防を生む長編ミステリーである。
 私は、湯川と石神との友人関係でありながら湯川自身の正義感によって事件を解決しようとするところが、石神が友人であるからこそ解決によって救おうとして、試みるのがとても印象に残ります。石神は親子二人を助けるため計画を持ち出すことで親子二人の気持ちを確かめ合うことができると思います。一番に読んでいただき、感じて欲しいことは愛情とはどういうものなのだろうということです。最近では、若い年代での悲しい事件や事故により親の愛情を知らない人たちが多くいると思います。この本はミステリー小説ですが愛情が多く詰まっていると、感じることができると思います。石神の不器用ながらも恋愛をどう見せてくれるのか楽しみな作品でもあります。また、小説の終盤には悲しみが多く含まれていて、解決したのにも関わらずうれしいようで悲しい結末になってしまったのでとても悲しい作品になっています。
 私が、これが一番楽しめたと思ったのは、ずっとこの事件のわかりそうでわからなさがあり、いったいどういうトリックなんだろうか、どのように解決するのだろうと、最後まで読まないとわからないのはすごいと思いながら読んでいました。ミステリーとしても、ものすごく楽しめた作品だと思います。そして、シリーズものとしても、とてもおもしろかったです。「予知夢」のあたりではずいぶんとマンネリ化しているようにも感じたシリーズではあったが、キャラクターたちがとても感じがよかったです。湯川という人間が非常に魅力的に書かれている作品であると思います。

推薦文一覧へ戻る

候補作品