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26歳OLが、ある日出会った行き倒れの草食系男子と、なんとなく始めた共同生活。草木を通した交流の中、ゆっくりと恋は紡がれる。しかしやがて問題も出てきて――!? 有川浩渾身の、甘々最強恋愛小説!
「咬みません。躾のできたよい子です」――そこから始まる主人公さやかとイツキの恋物語。正直に言って、甘い。甘すぎる。甘いものを好む方の多い女性読者でも、「こんな展開、ありえない!」と思わずにはいられないかもしれない。 だが、それがこの小説の特徴なのだ。完全なるエンターテイメントである本書は、その甘さ故に魅力が一層引き立てられていると言ってもいい。そして特に、ヒロインさやかの相手役、イツキのキャラクター。いったい、本書を読んだ何人の女性読者が、自分がイツキに会いたかった、と思ったことだろう。恥ずかしながら私もその一人である。「咬みません。躾のできたよい子です」と自分で宣言したように、イツキはよく躾のされた、素晴らしい男性として描かれている。さやかが胃袋をがっちり掴まれたように、料理の腕がよく、植物についての知識も深く、イケメンで何より紳士である。こんな男性にめぐり合って惚れない女がこの世界のどこにいようか。この本を読んだ後では、イツキ以上に素晴らしい男性にめぐり合えないような気がしてくるのだ。 さて、この本にはいくつもの植物が二人の生活に入り込み、食卓の上に登場してくる。ヘクソカズラをはじめとして、フキの混ぜご飯にセイヨウカラシナとノビルのパスタ、タンポポの天ぷら。あまり馴染みのない料理がずらりと陳列されている。しかし私たち読者の代わりにさやかが、初めて口にする料理一品一品に彼女の新鮮な感想を述べてくれるので、私たちにはその味が、まるで実際に食しているかのようにまざまざと想像できるのである。さやかの反応ひとつひとつが、山菜たっぷりの食事の素晴らしさを引き立て、私たち読者の食欲をそそる。こういった食事の場面も、本書の見所のひとつである。 ところで、人は一体、どんな恋に憧れるのだろうか。さばさばした関係の恋、いつも一緒にいられる恋と、恋の形態は様々であると思う。「植物図鑑」のメインテーマはやはり恋。本書で後半以降より進展して描かれているさやかとイツキの恋は、まさに多くの女性が憧れる「少女漫画みたいな恋」を文章化したものだ。互いに相手のことを大切に想うあまり嫉妬し、不安になり、時には相手を傷つける。それでも恋人から離れることが辛い。そばにいたいと願ってしまう。少女漫画よりもいささか味付けが濃いように思われなくもないが、それはご愛嬌。ラブコメディーはこのくらいの方がいっそのことふっきれて、堂々と味わえるのでいいのである。 互いに初対面同士である最初の場面から、二人のこの後の展開がありありと想像できてしまうのに、それでも読むことをやめられないのは、決して、この現実にはありえないような二人の恋に対する憧れめいた気持ちだけから来るものではないだろう。そこには、もうひとつの誘引がある。それは、もちろん筆者有川浩の綴る文章自体の引力である。ライトノベル調の文章に引き込まれるのは不本意だと思う方もなかにはいらっしゃるかもしれないが、この本に関してはそんなことは言っていられない。読めば読むほど味が出てくる。ページをめくればめくるほどに、二人のべたべたに甘い恋が、私たち読者のうちで現実味を帯びてくる。ここまで甘い恋を読める機会は、この本を除くとそうそうあるものではないだろう。一度読まず嫌いをやめて読んでみなければ、損をすることは間違いない。女性だけでなく男性にも気安く読めるようになっているので、是非一度ご賞味くださいと自信をもって薦められる一品である。
恋は甘く
推薦文No.3-1東京大学文芸部
「咬みません。躾のできたよい子です」――そこから始まる主人公さやかとイツキの恋物語。正直に言って、甘い。甘すぎる。甘いものを好む方の多い女性読者でも、「こんな展開、ありえない!」と思わずにはいられないかもしれない。
だが、それがこの小説の特徴なのだ。完全なるエンターテイメントである本書は、その甘さ故に魅力が一層引き立てられていると言ってもいい。そして特に、ヒロインさやかの相手役、イツキのキャラクター。いったい、本書を読んだ何人の女性読者が、自分がイツキに会いたかった、と思ったことだろう。恥ずかしながら私もその一人である。「咬みません。躾のできたよい子です」と自分で宣言したように、イツキはよく躾のされた、素晴らしい男性として描かれている。さやかが胃袋をがっちり掴まれたように、料理の腕がよく、植物についての知識も深く、イケメンで何より紳士である。こんな男性にめぐり合って惚れない女がこの世界のどこにいようか。この本を読んだ後では、イツキ以上に素晴らしい男性にめぐり合えないような気がしてくるのだ。
さて、この本にはいくつもの植物が二人の生活に入り込み、食卓の上に登場してくる。ヘクソカズラをはじめとして、フキの混ぜご飯にセイヨウカラシナとノビルのパスタ、タンポポの天ぷら。あまり馴染みのない料理がずらりと陳列されている。しかし私たち読者の代わりにさやかが、初めて口にする料理一品一品に彼女の新鮮な感想を述べてくれるので、私たちにはその味が、まるで実際に食しているかのようにまざまざと想像できるのである。さやかの反応ひとつひとつが、山菜たっぷりの食事の素晴らしさを引き立て、私たち読者の食欲をそそる。こういった食事の場面も、本書の見所のひとつである。
ところで、人は一体、どんな恋に憧れるのだろうか。さばさばした関係の恋、いつも一緒にいられる恋と、恋の形態は様々であると思う。「植物図鑑」のメインテーマはやはり恋。本書で後半以降より進展して描かれているさやかとイツキの恋は、まさに多くの女性が憧れる「少女漫画みたいな恋」を文章化したものだ。互いに相手のことを大切に想うあまり嫉妬し、不安になり、時には相手を傷つける。それでも恋人から離れることが辛い。そばにいたいと願ってしまう。少女漫画よりもいささか味付けが濃いように思われなくもないが、それはご愛嬌。ラブコメディーはこのくらいの方がいっそのことふっきれて、堂々と味わえるのでいいのである。
互いに初対面同士である最初の場面から、二人のこの後の展開がありありと想像できてしまうのに、それでも読むことをやめられないのは、決して、この現実にはありえないような二人の恋に対する憧れめいた気持ちだけから来るものではないだろう。そこには、もうひとつの誘引がある。それは、もちろん筆者有川浩の綴る文章自体の引力である。ライトノベル調の文章に引き込まれるのは不本意だと思う方もなかにはいらっしゃるかもしれないが、この本に関してはそんなことは言っていられない。読めば読むほど味が出てくる。ページをめくればめくるほどに、二人のべたべたに甘い恋が、私たち読者のうちで現実味を帯びてくる。ここまで甘い恋を読める機会は、この本を除くとそうそうあるものではないだろう。一度読まず嫌いをやめて読んでみなければ、損をすることは間違いない。女性だけでなく男性にも気安く読めるようになっているので、是非一度ご賞味くださいと自信をもって薦められる一品である。