青年のための読書クラブ

  • 『青年のための読書クラブ』

  • 桜庭一樹
  • 新潮文庫
  • 460円(税込)
  • 2011年7月
  • ミッション系のお嬢様学校「聖マリアナ学園」を舞台に、数々の事件の背後で秘密裏に活躍した「読書クラブ」。学園の創設から消滅までの百年にわたり活躍した異端の少女たちの理論武装の歴史を描いた物語……!

読書人よ、よき人生を

推薦文No.2-1
関西学院大学文芸部

 2008読書人大賞で4位に選ばれた本書が文庫化され、もう一度本年度の読書人大賞候補作品に選ばれた。多くの人に愛される理由は何だろうか。かくいう私も本書の魅力に取りこまれている一人なのだ。

 『青年ための読書クラブ』は聖マリアナ学園という女学園が舞台になっている。女学園と言われれば、「ごきげんよう」と挨拶しあって愛らしく頬笑みあう少女達が連想されるのではないだろうか。しかし、そのような可憐でおしとやかな乙女たちの物語ではないのである。学園の花形、「西の官邸」と呼ばれる生徒会や「東の宮殿」と呼ばれる演劇部と比べて、「南のへんなやつ等」と呼ばれほとんど噂にもされない読書クラブ。この読書クラブの部員達の物語なのだ。彼女達は異端であるが故に学園を追いやられ、敷地の南の隅にある古びた赤レンガの建物に集まり本を読む。異端と一口に言っても彼女達の個性はばらばらである。小太りの親父然とした少女、短髪を櫛でなでつけたボーイッシュな少女、七三眼鏡で毒舌を吐く少女。そんな彼女達部員は「本が好き」という一点で繋がれているのだ。
 女学園という閉ざされた一種特殊な世界で繰り広げられていく歴史が読書クラブの部員達によって記されていく。学園創設に関する秘密の歴史を含め、およそ100年間を一冊読むと駆け抜けることが出来る。彼女達は時に渦中の人として、時に傍観者として登場する。時代時代に沿った妙な熱気を帯びた様々な事件が起きるけれど、彼女達の基本は静かに本を読むことなのだ。そして、学園を覆う不吉な予言のもと物語は進んでいく。
 学園にどんな事件が起きようと、彼女達はアンティークのカップで紅茶を飲み、本を読み続ける。隅に追いやられた読書クラブの少女達に、本が好きな乙女、いや青年までもがどこか共感してしまうのではないだろうか。そう、読書クラブは読書人にとってホームなのだ。本を愛する彼女達は、住みづらい学園の中で生き生きと生活を送っている。

 物語のラスト2019年は現在から7年後の未来となった。差し迫った未来となったこの2019年の描写は考えさせられることが多い。何かと暗い事件や出来事が多いけれど、本書は明るい未来を指し示してくれる。彼女達はどれだけ時代が変わっても永遠に本を愛し、読み続けるのだ。
 「青年よ、そして読書人よ、よき人生を」と本書は叫んでいる。

推薦文一覧へ戻る

最終候補作品

候補作品

折れた竜骨
(米澤穂信/東京創元社)

神様のカルテ
(夏川草介/小学館文庫)

県庁おもてなし課
(有川浩/角川書店)

これはペンです
(円城塔/新潮社)

ジェノサイド
(高野和明/角川書店)

下町ロケット
(池井戸潤/小学館)

少女不十分
(西尾維新/講談社ノベルス)

すべて真夜中の恋人たち
(川上未映子/講談社)

ディスコ探偵水曜日 上・中・下
(舞城王太郎/新潮文庫)

ばらばら死体の夜
(桜庭一樹/集英社)

モダンタイムス 上・下
(伊坂幸太郎/講談社文庫)

リトル・ピープルの時代
(宇野常寛/幻冬舎)