青年のための読書クラブ

  • 『青年のための読書クラブ』

  • 桜庭一樹
  • 新潮文庫
  • 460円(税込)
  • 2011年7月
  • ミッション系のお嬢様学校「聖マリアナ学園」を舞台に、数々の事件の背後で秘密裏に活躍した「読書クラブ」。学園の創設から消滅までの百年にわたり活躍した異端の少女たちの理論武装の歴史を描いた物語……!

アイイロアイロニー

推薦文No.2-3
大東文化大学國文學研究会

「恋は、人の容姿にするものか? それとも、詩情にするものなのか?」
 さて、答えはどちらなのだろうか。美しい容姿を持つ者に添い遂げようと誓っても、趣を解さない言動に心が冷めていくのは恋の常。かといって素晴らしい教養を身に着けていようとも、人を惹きつける容姿がなければ見向きもされない。双方の資質を備え持つ無敵超人であれば悩むことなど何も無いのだが、往々にして天は二物を与えてくれない。そのため私たちは「容姿か?」「詩情か?」と頭を悩ませることとなる。
 この作品の舞台となる伝統あるお嬢様学校の「聖マリアナ学園」にも天から二物を与えられなかった少女がふたりいる。ひとりは醜い外見に剃刀のような頭脳を隠し持つ「妹尾アザミ」。彼女は知恵と同時に野心も持ち合わせており、学園を支配するという野望を胸に抱いている。しかしその醜さゆえに大衆から受け入れられることはなく、学園の異端分子「読書クラブ」の部長として燻ぶっていた。もうひとりは恵まれた容姿ではあるが教養を持たない「烏丸紅子」。彼女は下町の生まれであり乙女の学園などとは縁のない存在であったのだが、急な事情で「聖マリアナ学園」の高等部に転入することになってしまう。そのため良家の子女たちから「貧乏くさい異臭女」のレッテルを貼られてしまい、学園内のいたるところで迫害を受けてしまう。そんな紅子が孤独と闘いながら最後にたどり着いたのが、学園辺境の地「読書クラブ」だった。
 アザミと紅子が出会ったとき、皮肉にまみれた謀略が学園を包み込む。曰く、「紅子王子化計画」。アザミが知恵を振り絞って「異臭女」紅子に英才教育を施し、偽者の王子として学園に君臨させるという計画だ。この計画は困難を極めたがアザミの権謀術数を駆使した暗躍により成功を収める。大衆は紅子の名前を叫び彼女を王子と認め、紅子は王子として学園に君臨することとなった。しかし大衆が叫ぶものは紅子の名であって紅子の名ではない。紅子の一挙手一投足は全てアザミに管理されたものだったからだ。ならば計画が終わり王子紅子がアザミの管理下から離れたら――。
 さて、一連の謀略が過ぎ去った後に読者諸兄には冒頭の疑念について再び考えを巡らせてみてもらいたい。
「恋は、人の容姿にするものか? それとも、詩情にするものなのか?」

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