青年のための読書クラブ

  • 『青年のための読書クラブ』

  • 桜庭一樹
  • 新潮文庫
  • 460円(税込)
  • 2011年7月
  • ミッション系のお嬢様学校「聖マリアナ学園」を舞台に、数々の事件の背後で秘密裏に活躍した「読書クラブ」。学園の創設から消滅までの百年にわたり活躍した異端の少女たちの理論武装の歴史を描いた物語……!

きらめき

推薦文No.2-8
明治学院大学文芸部

 この物語には、くどいくらいに「美」が詰まっている。一抹の居心地の悪さを感じてしまう程に、この世界は「美し」く、きらめいている。そして同時に、溢れんばかりの「美」のスープの中に、隠し味のように「醜」が紛れ込んでいる。それは程良く甘美なスパイスを物語にもたらしているのだ。
 舞台は伝統ある女学校、聖マリアナ学園。学園内で起きた正史には残されない風変わりな事件を、「読書クラブ」に所属する女生徒達が「暗黒の読書クラブ誌」に書き記した形で紡がれている。各章で時代が移り変わり、それとともに登場人物も変わるのだが、皆どこか「場末感」漂う少女たちであるということは変わらない。その少女たちは一様に、中心ではない、少女たちなのだ。
 聖マリアナ学園では、年に一回「王子」と呼ばれる、「偽の男」が投票で選ばれる。この存在は正に中心であり、女生徒達の憧れの対象となる。「王子」は、スター性のある生徒が多く所属する演劇部から選出されることが常となっているのだが、第一章で描かれる一九六九年では、読書クラブ部長の妹尾アザミが転入生でつまはじき者の烏丸紅子を、様々な策略の元に「王子」にのし上げてしまう。妹尾アザミは、学園一の才媛ではあるものの、「こんもりと小太りの体型をした、醜い女生徒」「乙女の学園にあるまじき、手ひどい醜さ」「夜の町をさまよう下衆な親父がそのままクリーム色の乙女の制服を着たような、悪趣味な幻影の如き姿」という、「醜」の権化のような少女であった。一方で烏丸紅子は、身長一六七センチもある「ノーブルな美貌を持つ少女」ではあるものの、しかし「庶民の中の庶民」であり、異臭がすると子女たちにうとまれていた。この「美」である少女を、「醜」である少女が、その知性でもって裏から操り、またたく間に女生徒達の憧れへと、中心の存在へと仕立てあげてしまったのである。
 この「美」と「醜」の関係性が、認知できない違和感を生みだす。私たちは「美」にプラスイメージ、「醜」にマイナスイメージを抱きがちだ。しかし『青年のための読書クラブ』では両者が惹かれあうように融合している。その二律背反はしかし、どこか心地いい。
 そして、上記を支える感情として、恋する気持ちが、とても自然に描かれている。少女たちは、恋をする。恋しいから、恋をする。非常に普遍的で、しかし特別な気持ちを、少女たちは感じるがままに受け入れる。あなたの恋を思い出してほしい。あのきらめきが、ここには、ある。

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