青年のための読書クラブ

  • 『青年のための読書クラブ』

  • 桜庭一樹
  • 新潮文庫
  • 460円(税込)
  • 2011年7月
  • ミッション系のお嬢様学校「聖マリアナ学園」を舞台に、数々の事件の背後で秘密裏に活躍した「読書クラブ」。学園の創設から消滅までの百年にわたり活躍した異端の少女たちの理論武装の歴史を描いた物語……!

青春は読書とともに

推薦文No.2-9
中央大学学術連盟文学会

 本というものは、いつの時代でも、男の人でも女の人でも、いくつになっても読むことができる。だからこそ、読書をする人は年代に限らず多くいるし、こと大学の文芸サークルでは、同学年、先輩後輩OBOGなどのサークルの歴史の分だけ同胞がいる。
 文芸サークルにはその名の通り読書好きが集まる。部室でお茶を飲みながら、読書をし、議論に花を咲かせる。共に笑い合い、長期休暇にはみんなで旅行へ行き、本は放って散々遊ぶ。サークル内で特に気の合う友人と、明日のことなど気にせず夜中まで語り明かしたり、青春を思う存分楽しんでいる。
 『青年のための読書クラブ』は、読書という共通の趣味を持つ少女たちの、ちょっとした出来事が少女たちの手で綴られている。
 舞台は世間から隔離されたお嬢様学園。崩れそうな赤煉瓦ビルの一室にひっそりと佇む「読書クラブ」。集まる少女たちは学園内の変わり者。本作は、創立から終焉までの百年の歴史の中で、正史に残ることのない珍事件について代々の部員がおもしろ半分に書き残した「秘密のクラブ誌」の一部である。
 少女たちは学園という多感な少女だけの楽園の中で、自由奔放に青春を謳歌する。毎年学年から一人だけ選出する「王子」に熱狂したり、バブルの風を受け扇子を握ったり、はたまた歴史の終焉を駆け回るたった一人の少女部員など、五作の短編で構成される本作は、短編ごとに古典文学をモチーフにしている。学園内の変わり者である少女たちは、このときばかりは文学作品の主人公さながらに勇ましく、冷静沈着で、儚く美しい。
 学園で生きる少女たちが、来る未来の少女たちに宛てた秘密のクラブ誌を、学園の外にいる私たちが読んでしまうことにすこしばかりの背徳感を持つ。しかし個性豊かで純粋な少女たちに引き込まれ、読む手を止めることができないのである。
 私は「創立と終焉」という言葉を使ったが、これには少し語弊がある。それはぜひとも自分の目で確かめてもらいたい。そして少女たちだけの楽園を描いた本作がなぜ『青年のための』なのかもきっと読めばわかるはずだ。
 最後に、この物語を締めくくる、大人になった少女の言葉を聴いてほしい。
 「乙女よ(そして青年よ!)永遠であれ。世がどれだけ変わろうと、どぶ鼠の如く、走り続けよ。砂塵となって消えるその日まで。雄々しく、悲しく、助け合って生きなさい。」

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