下町ロケット

  • 『下町ロケット』

  • 池井戸潤
  • 小学館
  • 1,785円(税込)
  • 2010年11月
  • その特許がなければロケットは飛ばない――。最先端特許を取得した町工場は資金繰り、法廷闘争、内部分裂や企業買収とまさに崖っぷち。モノ作りに情熱を燃やし続ける男たちの意地とプライドを賭した戦いがここにある。

誇りと夢

白百合女子大学推理小説研究会

 資本金3千万円。従業員2百名。大田区のとある中小企業「佃製作所」はかつて宇宙科学開発機構の研究員であった社長、佃航平によりエンジンや周辺デバイスを手掛けることで売り上げが3倍になるほど成長を遂げていた。あたかも順調かと思われていた矢先、主要取引先から突如取引をやめることを言い渡される。あまりに唐突なことに呆然とする佃だが、相手は冷酷にそして他人事のように突き放す。
 突然の出来事により、会社は赤字へと転落。銀行へ融資を求めるも銀行はこれを拒否する。「会社の方針を変えるべきではないだろうか」そんな言葉が経理部長である殿村の口から発せられ、ひとまず考えることを決めた佃は新たな問題に直面する。ライバル会社ともいえる「ナカシマ工業」から自社が開発したエンジンを模倣したとして特許侵害を理由に訴訟を起こされたのであった。
 この物語は冒頭から急展開を迎え、様々な危機を迎えます。中小企業は大企業に比べると社会的に立場の弱い者であり、実際に大企業であることを利用し、力の弱い中小企業を潰しその優れた技術を接収することは行われています。しかしこの物語にはどんな危機にもめげず、果敢に立ち向かおうとする人たちが描かれています。ライバル会社の陰謀により会社を潰されそうになったり、会社にお金がないと知ると同時にあっさりと手のひらを返したかのように冷たい態度をとる銀行。中小企業であることを理由に技術は大企業より劣っていると勝手に決めつける高慢な人物などいろいろな人物が描かれてます。それにもかかわらず「佃製作所」の社員たちは自分たちの愛する会社、自分たちの誇りを胸に果敢に立ち向かいます。社会から冷たい態度をとられても屈することなく自分の信念を絶対に曲げず、夢を追い続ける社長へと成長していった佃に対して反発する社員も少しずつ出てきますが、そうした逆境の中でも徐々に社員もそして佃も自分たちの会社が大好きだという思いを胸に一致団結していくさまは誰が読んでも涙を誘うような感動をそして、大企業を相手にひるむことなく逆にギャフンと言わせてしまう場面は誰もが思わずニヤリとしてしまうことでしょう。
 ちょっと感動したい、かっこいい大人を見たいという方は是非この本を読んでみてはいかがでしょうか。

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