ビブリア古書堂の事件手帖〈3〉

  • 『ビブリア古書堂の事件手帖〈3〉』

  • 三上延
  • メディアワークス文庫
  • 578円(税込)
  • 2012年6月
  • ビブリア古書堂には、物静かで美しく聡明な女性店主がいる。彼女と古書堂の青年店員が、古書にまつわる数々の事件に出会う物語の3作目。

ビブリア古書堂の事件手帖<3>

推薦文No.13-3
美作大学図書館ボランティア

 「あなたの趣味は?」この質問に対して、「読書。」と答える人は一体どれくらいいるのだろう。そしてその中で、本当に読書が趣味の人は、どれくらいいるのだろう。
 この作品の主要登場人物の一人である篠川栞子は、ビブリア古書堂の店主であり、並外れた古書の知識と優れた洞察眼をもった、古書をこよなく愛する人物である。一方、もう一人の主要人物、ビブリア古書堂の見習い店員である五浦大輔は、本には興味があるけれども、活字を長時間読み続けていると軽い目まいに襲われるという体質のせいで、あまり本には詳しくない。本書の随所では、そんな大輔に対し、栞子が古書に関して説明をする際、普段物静かな栞子が途端に声のトーンを跳ね上げ、饒舌になる場面がいくつかみられる。このような描写からも、栞子がいかに古書を愛していることがうかがえる。一見正反対な二人だが、だからこそしっくりきていて、互いを補い合いながら、事件というには小さいかもしれない、古書にまつわる出来事を解きほどいていく物語である。
 解決していく事件にまつわる古書は、実際に存在する古書を題材としているため、事件を解き明かしていくと同時に、著者やあらすじはもちろん、その古書のよみどころが書かれており、思わず手にとって読みたくなるような気持ちになる。また、それらを栞子の台詞を用いて表現しているので、栞子がその古書を読み終えた後の興奮がそのまま伝わってくるような、臨場感のある文となっていることも読みたくなる要因の一つではないだろうか。
 つかず離れず、なんともいえない距離のふたり。大輔と関わりをもつようになってから、少しずつ変わり始める栞子、また、そんな栞子にひそかに想いを寄せる大輔の恋心の行方はいかに-。
 古書にまつわる謎だけではなく、思わずきゅんとなるようなふたりの人間模様も描かれており、個人的にはこのふたりの行く末が気になって仕方がありません。さし迫る謎を解き明かしていく楽しさとともに、恋にはつきものの、進みそうで進まない、このもどかしい感じも味わっていただきたい。

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