JORGE JOESTAR

  • 『JORGE JOESTAR』

  • 舞城王太郎
  • 集英社
  • 1,995円(税込)
  • 2012年9月
  • 無数の世界にわたるディオとジョースター家の因縁の物語が、舞城王太郎の手により時代を時空を超えてここに誕生! 超ド級のジョジョ愛に溢れた空前絶後の「ファン小説」ッ!

MAIJOJOのススメ

推薦文No.6-2
中央大学文学会

 本書は舞城王太郎による、漫画「ジョジョの奇妙な冒険」のトリビュート小説である。これを読んでいるあなたが、舞城やジョジョについてどの程度知っているのかは分からない。私がジョジョと聞いて思い浮かぶのは、登場人物のジョジョ立ちと呼ばれる奇妙なポースや独特の擬音、あるいはスタンドという特殊能力などでしかない。つまり、ほとんど知らない。しかし、本書は楽しめた。
 
 『俺の名前はジョージ・ジョースター。貴族だった祖父の名前からとったみたいなのだが、表記はJORGEってラテン風にしてある。』
 『僕の名前はジョージ・ジョースター。日本の福井県在住、十五歳のイギリス人だ・・・・・・が、見た目も血筋もおそらく日本人そのものだ。』

 物語は1904年のスペインのカナリア諸島、ラ・パルマ島と2012年の福井県西暁町から始まる。主人公は二人のジョージ・ジョースター。彼は原作第一部の主人公ジョナサン・ジョースターの息子であり、第二部の主人公ジョセフ・ジョースターの父である。それぞれの舞台で二人のジョージ・ジョースターの視点が章ごとに切り替わりながら、物語は進められる。この異なる世界、異なる時代、異なる場所にいる二人のジョージ・ジョースターをつなぐのは九十九十九という名の少年である。九十九十九とは以前に舞城が書いた、清涼院流水のトリビュート小説に登場した人物と同じ名前であるが、本書の九十九十九との直接の関連はない。物語はこの三人を軸に原作第一部から第七部までの様々なキャラクターを巻き込んだ、時空をも超越した非常に壮大なものである。

 本書は原作ファンからの評判がすこぶる悪い。それは同姓同名のキャラクターが原作で描かれたのとは異なる性格で描かれる、いわゆるキャラ崩壊をしていたり、第一部から第七部までを巻き込んだストーリーの結果、原作での設定が無視されているように感じるからのようだ。確かにこうした行為は原作に喧嘩を売っているに等しいかもしれない。だが、ここで本書が「VS JOJO 」の一冊であることを思い出してほしい。『JORGE JOESTAR』は舞城王太郎のジョジョに対する戦いなのだ。さきほどの原作ファンの言うとおりにして、出来上がるものはいかに優れていたとしてもジョジョの二次創作でしかない。そうではなく舞城は、自分ならジョジョをいかに換骨奪胎するか、それを本書で示していた。このことは原作を馬鹿にしていることを意味しない。むしろ、本書にはジョジョへの愛が溢れている。本書でのジョージはスタンドも使えない非常に弱い存在であるが、そんな彼が自らの弱さを勇気をもって乗り越える様はジョジョのテーマである「人間賛歌」にも通じている。本書を読むときには作品の中に深く潜る必要がある。そこには原作のジョジョと同じ光が見つかるだろう。私は今、ジョジョを読み始めている。

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