何者

  • 『何者』

  • 朝井リョウ
  • 新潮社
  • 1,575円(税込)
  • 2012年11月刊
  • 自分を生き抜くために必要なことは何なのか? この世界を組み変える力はどこから生まれて来るのか? 影を宿しながら光に向かって進む就活大学生の自意識をあぶりだす!

あなたは何者ですか?

推薦文No.11-2
専修大学文学研究会

 私は自己紹介が嫌いだ。自己紹介とはつまり、自分が何者かを他人にアピールすることである。自分はどういう人間か、それを簡単に言える人間は多くないと思う。私はそれを簡単に言えてしまう人間を信用出来ない。私はこういう人間なんですよ、という主張は「わたしをこう見てください!」という願望の顕れでしかない。私はあれが好きです、という発言は「そんなものを好きな私、すごいでしょ?」という自己顕示にしか見えない。それらは酷く滑稽で欺瞞じみて観えるし、またそんなことをしてしまう人間に薄ら寒さを感じる。そしてそれらを見せられることも、私自身がそれをすることも嫌なのである。自分がどういう人間かをアピールする行為が私は嫌いなのである。気持ち悪いとすら思える。だがこれから私は自己紹介を必ずしなければならなくなるし、今までもしてきたのだ。これから自己紹介をしなければならない理由。それは就職活動である。大学生の方々にとって「就職活動」は学年によってその近さが異なるだろう。この推薦文の筆者である私は現在2学年であり、まだ就職活動と聞いてもピンと来ないものがある。けれど、就職活動が一体どういうものなのかぐらいは分かる。自分を企業に売り出すということだ。自分という資本を、いかに素晴らしく有用なものかアピールする。それが就職活動というのであれば私はしたくないと思うのである。

 朝井リョウの「何者」は一部の人間、批判が好きな人間の心を抉る小説作品である。そう、前半部の内容を書いた私のような人間をだ。何かしらを批評するような人間は、観察対象をあらゆる言葉を繰りその論理武装をもって分析する。その行為は一体どういう感情から出づるものなのか、どういう感情を生み出すのか。ニーチェの弱者道徳のように、自らの正義や優位性を示すためだけに悪や弱者を作り出してはいないだろうか? 自分が何者になるために他者を否定し馬鹿にすることをあなたはしていませんか? 様々な概念が生まれ差異性が作られたこの現代社会において、自分を存在を他の何かと比較せずに肯定することは難しいかもしれない。だが、自分が無理に何者かになろうとは思わず、また何者かになりたいと思う自分を否定せずに、ただ自分を自分として受け入れ肯定する人間。そんな人間になることが真に何者かになるということではないだろうか? 私はこの「何者」を読んでそう思った。
 自分が何者でありどういう存在であるかを悩む若者や就職活動を控えてどう社会の流れに対して生きれば良いのかを悩む大学生たちに、そして人間観察や分析が好きな人間にこの作品をお勧めしたい。

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