know

  • 『know』

  • 野崎まど
  • ハヤカワ文庫JA
  • 756円(税込)
  • 2013年7月刊
  • 超情報化社会。人造の脳葉<電子葉>の移植が義務化された2081年の日本・京都。情報庁・官僚の御野・連レルが出会う少女、道終・知ル。彼女はすべてを知っていた。

何でもは知らないわよ。知ってることだけ

推薦文No.12-1
明治大学ミステリ研究会

 本作、『know』はタイトルの通り、≪知る≫ということに纏わる物語だ。

 舞台は2081年の京都。超情報化対策として人造の脳葉である「電子葉」の使用が義務化された世界。そこではあらゆる情報が、あらゆる場所で取得できる。情報庁で働く審議官の御野・連レルは、十四年前に失踪した恩師が残したコードをきっかけに一人の少女、道終・知ルと出会う。「知る」という名前を与えられたその少女は、すべてを知るために生まれてきたのであった。御野は、恩師の真意、少女の目的、そしてすべてを知るため少女と行動をともにする。

 「知りたい」。
 作中の人物たちは、その願望を常に口にし、そのために行動する。
 では≪知る≫とは一体どういうことなのだろうか。
 電子葉の使用により、情報が簡単に手に入る世界の中で、なぜ彼らはどこまでも≪知る≫ことを求めるのだろうか。

 「≪知る≫と≪生きる≫は同じ現象ですよ」
 「生きたい。知りたい。人間とは、そういうものなんですよ」
 知ルは言う。
 この作品は、章題にも表れているように知ルたちの≪知る≫ことを求める生き様を描いている。
 イザナギは振り向かずにはいられない、アダムとイブは知恵の実を食べずにはいられない、人間はブラックホールに近づかずにはいられない。これはすべて≪知る≫ことへの欲求から生まれるものだ。たとえ命が危険に晒されても、人は生きるために≪知る≫ことを願わずにはいられない。それは、この作品を読む私たちにも共通する願いだろう。

 ≪この作品はきっとこうなるだろう≫
 ≪この作品は私の世界を変えてくれるに違いない≫
 私たちは、この物語の結末がどうなるのかを想像し、期待し、知りたいと願いながらページを繰っていく。それはすべてを知り、その先にあるものを見ようとする御野や知ルと同じように。

 御野と知ルがすべてを知ったとき、世界はどう変わるのか。そして、物語の結末を知ったとき、あなたの世界はどう変わるのか。それは、あなた自身の目で見て、≪知って≫ほしい。

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