丕緒の鳥 十二国記

  • 『丕緒の鳥 十二国記』

  • 小野不由美
  • 新潮文庫
  • 620円(税込)
  • 2013年7月刊
  • 十二国記シリーズ最新作。慶国に新王が登極した。即位の礼で行われる大射とは、鳥に見立てた陶製の的を射る儀式。陶工である丕緒は国の理想を表す任の重さに苦慮していた。

『丕緒の鳥 十二国記』

推薦文No.13-1
美作大学図書館ボランティア

 十二国記シリーズ待望の新作ということで、読み始まる前から気分の高揚を抑えることができなかった。十二国記シリーズは中学生のころから読んでいる作品のため、個人的に思い出深い愛読書の1つである。
 「丕緒の鳥」は十二国記シリーズのスピンオフ作品となっているため、本編の主人公である陽子に焦点をあてた作品を一通り読んでおくと、より作品を楽しむことができる。既刊を全て網羅する必要はないが、十二国のそれぞれの情勢や登場人物、人間関係を把握しておくと、随所でみられる過去の作品を彷彿させる文章をとらえることができる。本編の内容が見え隠れすることもスピンオフ作品の楽しみの1つだと思うため、感慨もなくさらっと読み流してしまうのは、非常にもったいないことだろう。長編シリーズのため、読み進めるのに少し時間を要するが、ぜひ既刊を読破してから手に取ることをおすすめする。
 本作品は、それぞれ慶、柳、雁国にまつわる全4話の短編集で、本編の主人公が王に即位したばかりの話だったり、柳国のこれからの行く末を描いたものだったりと、時間軸が多少異なっている。
 個人的に特に印象に残った話は「青条の蘭」である。この話では明確に国名を書かれているわけではないため、十二国の位置関係や王宮の名前から、どこの国の話か推測する必要があるだろう。山の木々を侵食する謎の疫病に立ち向かう男たちの様が描かれており、皆が力を合わせて郷里を守ろうとする人々の姿に感銘を受ける話である。疫病の恐ろしさを人々に伝えることができなかったり、己が私腹を肥やそうとする者に阻まれたりと、数々の困難が待ち受けるが、想いを誰かに伝えることの難しさを感じる反面、最終的に大切なものを守りたいと思う気持ちは万人に共通することだと感じることができる1話である。
 本編を取り巻く名もなき人々に焦点を当てているので、全ての話においてどこかで自身におきかえて読み進めることができる作品になっていると思う。主人公の活躍を読むのはもちろん楽しいが、たまにはその周りの人々の生き様を目にするのも一興ではないだろうか。

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