動きすぎてはいけない ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学

  • 『動きすぎてはいけない ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学』

  • 千葉雅也
  • 河出書房新社
  • 2,625円(税込)
  • 2013年10月刊
  • ドゥルーズの哲学はマスメディア、SNSの広まりによって「接続過剰」となった現代と引き合わされ、「切断の哲学」へ。その出会いと融合の感動が味わえる、読み応え抜群の書。

現代社会における哲学の必要性

推薦文No.2-1
大東文化大学國文學研究会

 「Twitter」、「Facebook」。これらのSNSを利用している大学生は一体どれほどいるだろう。世界中の多くの人々と情報を共有できるようになった一方で、私たちは、さまざまな人間関係と大量の情報の氾濫の中に身を置いている。
 情報の氾濫に対して私は哲学の素養が不可欠ではないかと思う。情報の根本原理、またそれらを統一的に把握し、理解する必要がある。なぜなら、そういった手続きを取らなければ、情報に流されるがままになってしまうからだ。
 ジル・ドゥルーズ、この名前を聞いて一体どれだけの人間が頭にピンとくるだろうか。かくいう私も本書の表紙を見た際に、名前を聞いたことはあるが、はてどういった哲学者であったかと頭を悩ませたものである。
 簡単な説明をしておくと、ジル・ドゥルーズとはフランスの哲学者であり、ポスト構造主義の思想家だ。ポスト構造主義について学ぼうとするなら、彼の論じた哲学について学ぶことは非常に重要である。
 哲学書を読む場合、大抵は「哲学入門」や「カント入門」といった「入門」の二文字の入った題名の本を手に取ることが多いのではないだろうか。私の場合も同様で、まず哲学の特定の分野について知ろうとする場合、「入門」の二文字の入った本を読み、ある程度の知識をつけてから、当該分野に関する本を読む。
 しかし、本書の場合、そういった手続きが不要である。なぜなら、著者である千葉雅也氏が平易な言葉で解説を行っているからだ。
 また、冒頭部分において、ジル・ドゥルーズについての、特に死ぬ間際の解説が書かれており、特別に必要がない限り、本書以外の本から逐一調べる必要がない。また、ドゥルーズ本人についてだけでなく、第二次世界大戦後のフランス哲学・思想の推移、ポスト構造主義という名称の一括りが出来上がるまでの経緯が述べられている。
 こういったことは、予備知識に関してではなく、本書の内容についても同じことが言える。本書の構成はドゥルーズの文献(『経験論と主体性―ヒュームにおける人間的自然についての試論』や『ニーチェと哲学』など)から著者がドゥルーズの主張した内容を引用し、その内容について著者なりの解釈・意見を述べる形を取っており、ドゥルーズの主張を踏まえたうえで、一度著者によってかみ砕かれた文章を読者は読む形になる。
 また、本書でも言及されている接続詞「と」についていえば、蓮實重彦氏の『批評あるいは仮死の祭典』による引用を使って解説がなされていたりと、著者以外の人間からの言及が用いられているため、説明のすべてが単一的でなく多角的であるため、哲学書に対するイメージとは裏腹に本書には読みやすさがある。
 哲学書を読みたい、哲学に触れたい。そう思っていながらも、敷居が高いと感じ、中々手を出せずにいる。あるいは哲学について学ぶのは自分には無理だとあきらめている人にも、本書は哲学の世界に進むための入り口となってくれるだろう。

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