いなくなれ、群青

  • 『いなくなれ、群青』

  • 河野裕
  • 新潮文庫
  • 637円(税込)
  • 2014年9月刊
  • この島から出るには、なくしたものを見つけなければいけない。七草は2年ぶりに真辺由宇と再会する。この物語はどうしようもなく、彼が彼女に出会ったその時から始まる。

あなたを捨てたのは、誰?

推薦文No.1-3
法政大学 もの書き同盟

 「ここは、捨てられた人たちの島だ。この島を出るには、真辺由宇が失くしたものをみつけなければならない」
 階段島。そこは捨てられた人々が集まる島。だいたい2000人が暮らしていて、晴れた夜には圧倒されるような、きれいな星空が見える。島の人は、島に来るまでの数日間の記憶を失っている。象徴的な長い階段を上ると学校がある。でも、中学校と高校しかない。毎週土曜日に定期船が来て、アマゾンからの荷物を届けてくれる。でも、人は運んでくれない。そして、島は魔女によって守られている。
 主人公の七草は11月19日午前6時42分、真辺由宇に再会する。そうして、湖面のように静かだった彼の高校生活に、さざ波が立ち始める。
 よく考えればおかしい。そのくせ、妙に自然。大きな山も、深い谷もない。穏やかで、ふと思い出したくなるような、静かな日常。そんな中で起きる、小さな事件。
 拳銃と星の絵、そしてメッセージ。
 島に来るはずのない、小さな少年。彼はいったい、誰に捨てられた?
 ミステリーとは違う。ただのファンタジーとも、ただの青春小説とも、少し違う。これは、きっと誰もが語れる物語。どうしようもない青春の、小さな1コマ。
 ゆらゆらと漂うような島の日常を語る、ゆらゆらと心地よく漂うような文章。その中で、真辺由宇はどこまでも真っ直ぐに、ただ自分の理想を追って走り出す。その背中に、一つだけ諦められなかったもののために、七草はついていく。
 悲観主義の主人公・七草は言った。
 「我慢の同義語は諦めだ」
 諦めてしまえば、何も期待しなければ、どんなことだって我慢できる。
 理想主義のヒロイン・真辺は答える。
 「我慢の対義語が諦めだよ」
 諦めさえしなければ、どんなことでも、どんな相手でも我慢強く付き合える。
 落書きされたピストルとスター。島に来るはずのない少年。
 矛盾した二人が出会ったとき、どうしようもなくこの物語は動き出す。
 さあ、あなたを捨てたのは、誰だろう?
 あなたの失くしものは、なんだろう?

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