ソロモンの偽証(1~6)

  • 『ソロモンの偽証(1~6)』

  • 宮部みゆき
  • 新潮文庫
  • 810~907円(税込)
  • 2014年9月~刊
  • 終業式の朝、中学校の裏庭で不登校だった少年が死体となって発見された。ひとつの事件の混乱から人々の不安や悪意が広がってゆく。複数の視点から描かれるミステリー。

偽証している

推薦文No.10-2
東京理科大学 文芸サークルClock

 不登校だったクラスメイトの男の子が死んだ。

 彼らにとっての物語はクラスで孤立していた柏木卓也の死から始まった。ただその始まりを作中の同級生らは感じていなかったことだろう。柏木卓也は自殺だと思われていた。だが他殺だったとする密告書の存在、担任の怪我、交通事故の発生によるさらなる同級生の死......さまざまな出来事が中学生の彼らをかきたてる。彼の死の真相へと......。彼らが選んだのは、「法廷で真実を明らかにすること」だった。

 考えていることは口にしないと伝わらない。だからこそ嘘やごまかしが通用する。この作品にはたった一人の主人公が存在しない。だからこそ、要所要所で各人の思いが書かれることがあってもその全てを手繰ることは難しい。

 『ソロモンの偽証』は三部構成だ。一部は事件、二部は決意、三部は法廷。一部の事件ではクリスマスイブの日の柏木卓也の謎の死からはじまり保護者・学校・地域と大人たちを翻弄する。死への疑念が深まる中で、このまま何もかもがはっきりしないモヤモヤとした状態では前へ向かって進めないのだ、と学校内裁判を開こうという道筋が提示される。二部では裁判へ向けて検察側・弁護側に分かれて死の真実を求め調査が始まる。弁護側は柏木卓也。

 殺害の容疑をかけられた学校一の不良の容疑払拭のために。検察側は犯行を立証するために。三部では法廷が開廷し、陪審員に対して双方が主張を行う。あくまで学校内の法廷、だけど半端に終わらせることはしない。彼らは決意し、学校も大人も巻き込んで真相へ迫る。

 読みながら、読者はタイトルのソロモン、偽証、という言葉に引っかからずにはいられないだろう。彼らのやり取りに引っかかったり、自分なりの推論を深めていったりするだろう。決してスラスラとは読ませない、それでいて読者の心を掴み、興味を持続させるのだから大したものである。いつしか読者は城東第三中学校の学級の一員になり、ともに真相を貪欲に求めはじめる。そしてたどり着く結末に、驚きを禁じえず、またすべての収束を感じるのだ。腑に落ちる、といえよう。文庫版による分割で読者は更に立ち止まり考える機会が与えられる。

 ぜひこの物語を感じてほしい。

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