財団紹介・ご挨拶
読書推進運動を国民運動へ
一般財団法人 出版文化産業振興財団(JPIC)
理事長 肥田美代子
人がものを考え、表現する・行動する・コミュニケーションを図ることの基本には、言葉があります。「言語力は、生きる力」とも言えるでしょう。
しかし、現代の日本人は、情報ツールの急速な発達による生活環境の変化により、言語力が弱体化していると懸念しています。昨今の政治家や企業の犯罪、家族間や児童などが巻き込まれる痛ましい事件などを見るにつけ、言語力の弱体化から引き起こされるモラルの低下や、人として当然の他者への思いやりの未発達などが噴出しているものと思われます。
残念ながら、2004年12月に発表された経済協力開発機構(OECD)の03年学習到達度調査(PISA・・・※1)の結果が、そうした懸念が現実のものであることを、私たち日本人に突きつけました。(※1・・・41か国・地域から約27万6,000人の15歳児が参加し、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーを主要3分野として調査)
読解力で、日本は前回00年調査の8位から14位へと、わずか3年で大きく後退してしまいました。
学習到達度調査ですから、学校教育が大きく影響しているでしょうが、私には、それとともに、日常生活における読書習慣の不足が大いに影響していると思えてなりません。
豊かな言語力を獲得し、読解力を向上させるには、たくさんの読書経験を積み、読書習慣を身に付ける他ありません。
一方、この読書の機会を提供する日本の出版文化産業は、書籍・雑誌を合わせ約2兆2,000億円程度(05年、以下同じ)と、産業としては決して大きなものではありませんが、年間7万6千点超の新刊を含め、市場には約60万点にも上る多様な出版物が流通しています。こうした活発な出版活動は、国民の知る権利を保障し、読者の知的好奇心を満たすことから、わが国の健全な民主主義の発展に欠かせません。
しかし、その出版産業もここ10年ほどは、多くのベストセラーや話題作を生み出しつつも、全体としては縮小傾向にあり、ここでも、「活字離れ」を痛感せずにはいられません。
私は、05年までの国会議員活動で、一貫して「言語力こそ、社会生活の基盤」との考えに基づき、「読書環境の整備」「活字文化の振興」に取り組んでまいりましたが、まさに、これらの現状を目の当たりにし、日本の将来に危機感を持っていました。
同じように、こうした現状を憂いつつも、活字メディアの魅力と重要性を共有していた「活字文化議員連盟」が、関係各方面のお力添えをいただき、05年7月に「文字・活字文化振興法」を制定いたしました。私も同議連事務局長としてその成立に努力し、今後の具現化に期待と希望を抱いておりました最中、同年9月の総選挙で、残念ながら当選を果たせず、15年間にわたる国会議員生活から身を引くことを決心いたしました。
以来、児童文学作家としての創作活動に戻ろうと準備をすすめていましたところ、「理念法を実態あるものにするには、これからがさらに大事。読書環境の整備に向け、まだまだやることはあるぞ」との叱咤激励を、多くの方々より頂戴いたしました。
そのような中で、JPIC理事長就任のお話をいただきました。
前述の「これからが大事」とは、私もまったく思いは同じで、法律は制定が目的ではなく、その後、十分な運用がなされなければ、国民のためには何の役にも立ちません。
同法とセットで採択された「文字・活字文化振興法の施行に伴う施策の展開」は、政治・行政・民間が連携して推進しなければならない施策政策です。
JPICの活動は、読書推進運動を展開する上でたいせつな「人材育成と組織化」「活動機会の提供」「販売機会の創出」「情報の収集と提供」「団体・企業との協力」を包含しており、これまでのJPICの熱心な活動ぶりに、敬意を払うと同時に、今後は、私もその一員として、一緒に活動できることを、心から楽しみにしております。
昨夏の法律制定を、JPICの活動を更に大きく育てる絶好の機会と位置付けるとともに、JPICが、読書推進運動を一大国民運動に育てていく役割の一翼を担えるよう、努力して参ることをお約束いたします。
どうか皆様のこれまで以上のご支援ご協力を賜りますよう、重ねてお願い申し上げます。
以上
