変わらぬ使命、変わるJPIC
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一般財団法人出版文化産業振興財団(JPIC)
理事長  近藤敏貴

<設立30年周年を迎えて>
 1991年に設立されたJPICは、2021年3月27日をもって設立30周年を迎えることができました。JPICの運営を支えてくださった全ての方のご厚情に対し、この場を借りて改めて感謝申し上げます。
 JPICは設立以来、読書推進活動の展開や出版・読書に関する学びの機会創造などの各種事業を展開し、出版業界・読書推進関連団体として、その活動を拡充してまいりました。

<出版業界の現状>
 出版界に長く携わる者として、読書は心の栄養であると信じています。情報が溢れ、めまぐるしく変化していく現代社会においてこそ、読書の効能はより強く発揮されます。
 読書の価値は不変である一方で、経済活動の面で言えば、ご存じの通り、出版業界には長らく「出版不況」の言葉が付きまとっています。
 1996年をピークに市場の縮小が続き、雑誌の大量生産大量流通を前提に組み立てられた出版流通ネットワークの維持継続が大きな課題となっています。
 多くの消費者にとって、今や情報は無料で手に入るものであり、これまで「情報」を商品としてきた出版社は、ビジネスモデルの転換を余儀なくされています。
 書店の収益性も年々悪化しており、惜しまれながらも閉店するお店は後を絶ちません。今や全国市町村のうち、およそ2割の自治体に書店が存在しないという、日本の文化状況にとって危機的な事態に陥っています。

 一方で、このコロナ禍においては、人々が出版物に寄せる信頼の厚さが改めて明らかになりました。書物や書店の価値に、人々はもう一度気付くことが出来ました。しかし、出版業界の抱える諸課題が解決したわけではありません。
 「出版不況」の要因は、複雑に絡まり合った糸のような状態であり、快刀乱麻を断つように解決策を提示できるわけではありません。それが出来れば、話はどれだけシンプルだったでしょう。現実には、戦後70年以上にわたって構築されてきた強固な仕組みを前にして、改善は思うように進んでいません。
 デジタルシフトの加速度的進行や、それに関連する紙媒体の相対的地位低下、全国的な輸送コストの高騰、未だアナログで非効率な仕組みの残る流通の現場、業界の少子高齢化、後継者不足等々......。実に様々な課題が山積しています。
 これらの諸課題を放置していれば、早晩、日本の出版文化は致命的なダメージを負ってしまうでしょう。出版文化の崩壊は、即ち「知性」の危機であり、「知性」とは理性的な国家と民主主義、そして何より豊かな人間性の根幹を支えるものです。
 出版業界は大きな岐路に立たされています。そのような状況において、果たしてJPICはこれまでと同じような役割に甘んじていていいのでしょうか。業界横断型の団体として、担うべき役割が他にもあるのではないでしょうか。

<新生JPICのミッション>
 設立から30年を数え、JPICは大きな転換点を迎えています。出版文化の未来を拓き、出版産業の発展を支え、読書の喜びを広く世にアピールするための組織として、生まれ変わります。

 加えて、昨今はSDGs(持続可能な開発目標)に対する関心も高まっています。世の中に出版文化は必要であると認められ、真に読者に寄り添う出版業界であるためにも、SDGsへの取り組みは今後益々重要になってきます。一私企業に留まらないJPICであればこそ、出版を通して広くSDGsを普及する仕掛け作りに、挑戦することができるのです。

 出版産業は日本全体の文化向上に多大な貢献を果たしてまいりました。その発信拠点として地域社会に根差し、出版産業の発展を支えてきたのは他ならぬ書店です。書店の未来を創造し、古今東西のあらゆる出版物に気軽に親しめる環境を人々へ提供し続ける。全ての人へ読書の喜びを送り届ける。これがJPICの使命です。
 出版人であれば、誰しもが、これらの思いに共感してくれるものと信じています。今ここから、JPICとして新たな一歩を踏み出して参ります。
 
 末筆となりましたが、読者や出版業界の皆様とともに、出版・読書活動の可能性を切り拓き、出版文化振興に資する事業に取り組めますよう、一層のご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。


以上

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